くにゅくにゅの雑記帳

実験ノート的なやつ

さくらの通信モジュールについて

10月5日,さくらインターネット株式会社は,幕張メッセで開催中の CEATEC JAPAN 2016 にて,「さくらのIoT Platform β」を11月から提供することを発表いたしました。

 

「さくらのIoT Platform β」のお申込受付開始のお知らせ | さくらインターネット

 

わたしは,このサービスに特化した「さくらの通信モジュール」について説明するために,登壇させていたきました。お聞き苦しい部分もあったかとは思いますが,来場いただいた方々には,最後までご清聴いただきましたことに,改めてお礼申し上げます。また,このような発表の場に,中の人の一人として立てたことは光栄の極みであり,さくらの IoT Platform の開発の一翼を担う機会に恵まれた幸運には,感謝してやみません。

 

今回発表した「さくらの通信モジュール」は,さくらの IoT Platform における位置づけとしてはデバイス側の通信端点で,Platform との間でデータの送受信を行う必要がある,お客さまの製品に組み込んで使っていただくことを想定した製品であります。モジュールと Platform との間の通信には,LTE網を使用しています。したがって,このモジュールには,セオリーどおりLTE通信モジュール(太陽誘電製)搭載されており,このことは,公開されている写真からも容易に見て取れるでしょう。

f:id:kunukunu:20161007003523p:plain

 

さて,みんなが一番気にしているであろうカネの話をしましょう。

 

さくらの通信モジュールを含めたサービスの価格も発表しました。ものすごく大まかに言うと,2年間相当分の通信料金込みで9,660円。キャンペーン価格は,なんと半額の4,980円です。

 

この時点で,かなり「さくららしい」価格だという自負はありますが,それでも個人的には,これがどう受け止められるのかが,少し気がかりでした。

 

3GやLTEモジュールを使ったことがある方なら,この価格はインパクトは即座に理解できるところでしょう。従来のLTEモジュールは,部品で買っても数万円とかするものでしたから,それを組み込んで何らかの有用な製品を作れば,その価格も自動的に数万円のオーダーになるのです。いえ,せざるを得ないのです。それなのに,さくらの通信モジュールは,あろうことか通信料金も込みで1桁小さい価格ですから,あり得ないし,あってはならない水準だ,と思われた方も当然いることと思います。

 

 

一方で,コンスーマー製品を手がけていて,常日頃からの熾烈なコストダウン要求にさらされ続けた結果,金銭感覚がおかしくなってしまったハードウェアエンジニアの値頃感も理解しているつもりです。受動部品なんて1円未満が当たり前。ちょっとしたICの何十円だって高いのです。まして100円を超えるような部品は,おしなべて贅沢品であって,邪悪であり,安易に採用しようものなら「わたしは原価低減活動に協力しない会社のガンです」というプラカードを持たされ,悪い例としてさらし者にされる世界もあるわけです。

 

そんな現場では,通信モジュールであろうが何であろうが,内容を聞く以前に提供価格の字面だけでギラギラと眩しすぎ,直視できない存在に見えてしまう可能性も否定できません。もちろん,それは提供者側として,価値を十分に伝え切れていないからにほかならないのですが,どうか,これだけは理解していただきたいと思うのです。さくらインターネットは,さくらの通信モジュールが量産製品に搭載され,何十万個,何百万個と運用される世界を本気で狙っています。それを実現する上で,必要なプラットフォームはどんなものであり,量産される製品に組み込むための通信モジュールとはどんなものであるべきかを,きちんと考えた上での結果がこれなのです。

 

「IoT」というと,バカにする人もいるでしょう。よくわかっていない連中が,デキの悪いプロトタイプを作って,これぞIoTだと満足している事例がほとんどではないかと誹る人もいるでしょう。たしかに,そういう一面もあると思います。仮にプロトタイプが素晴らしいアイデアを実現したものであったとしても,そのプロトタイプをそのまま製品化できますか? 同じものを市場が求める価格で作れますか? ということになると,これまではそうではなかったのではないでしょうか。

 

さくらの通信モジュールも,もちろん,最初はプロトタイプユースがメインとなることでしょう。そのために,MOQは1個として,Arduinoシールドといったオプション製品も提供しており,手軽に使っていただくことができます。違いはその先にあります。もちろん,プロトタイプと量産の間には大きな差があって,安易にできることではありません。しかし,少なくとも,そのモジュールは,量産製品に組み込むべく作られたものですから。